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ニュース: 医療産業の発展に医療ツーリズムを活かそう
2013-06-05
来日の観光客は好調
日本政府観光局によると、2013年4月の訪日外国人客は前年同月比18%増の92万3000人と、2年9ヵ月ぶりに過去最高を記録した。円安と航空会社の新規就航などで、最多の韓国(33.7%増)、台湾(42.5%増)、香港(24.3%増)、タイ(46.9%増)など、冷え込みの続いている中国(33.0%減)を除いて軒並み大幅に増加した。こうした中で「医療ツーリズム」が低調だ。2011年に発給された医療滞在ビザは70件、海外からの受け入れ患者数は2011年4~11月で約1日1件だったそうだ。2010年に年間150万人を受け入れたタイとの落差はあまりに大きい。
医療ツーリズムは日本の技術力を活かせるはず
医療ツーリズムは「医療を受ける目的で他の国へ渡航すること」で日本政策投資銀行の資料によると、約50ヵ国で実施され、2012年の市場規模は1000億ドルと推計されている。
日本と同様に出遅れた韓国では2009年5月に医療法を改正し、国を挙げて外国人患者誘致に取り組んだ。2007年の7901人から2009年には6万201人、2010年には8万1789人、2011年には中国からの医療観光客が増え13万人に達したといわれている。
韓国の“売り”は、先進国に比べ安価で高度な医療サービスだという。日本も医療コストは韓国と同程度で技術でも負けてはいない。「安全」という売りもある。本気になってやればできるということだろう。
アベノミクスの成長戦略に期待
医療ツーリズムに取り組むには課題も多い。医療通訳者の育成、外国人に対応できる医師、看護師の養成、空港、駅、病院内などの多国語案内表示、多国語で対応できる案内所の設置などなど、チョット考えただけでもいくつも思いつく。
なかでも、ニーズを探るマーケティング、どんな治療ができるのかを知らせる広報、宣伝活動は極めて重要で、宣伝を禁じている日本の制度に特例を認めることも必要になってくる。
ドラッグラグ(新薬承認の遅延)やデバイスラグで医薬品と医療機器を合わせると日本は3兆円の輸入超過だそうだ。医療機器の日本の輸入価格は、輸入元の価格の約3倍が相場という情報もある。
日本の医薬品や医療機器の認証には非常に長い時間と膨大なコストがかかる。どんなに優れた新薬や医療機器を開発しても中小企業では資金力がもたずに商品化できないのが実情である。アベノミクスでは「健康・医療」を重点分野にして制度の見直しに取り組んでいる。
日本の医療国民皆保険制度と調和した、医療ツーリズムを梃に、10年、20年先まで見越した医療制度の革新を期待したい。(執筆者:有元舜治 日本経営管理教育協会監査役 編集担当:水野陽子)
サーチナ 2013/06/05
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0605&f=column_0605_020.shtml