医療産業の海外戦略コンサルティング企業  ㈱ボーラボ

お気軽にお問い合わせください お問い合わせ 海外医療の求人・就職
海外の病院などをご紹介、まずはご登録ください。
求人フォーム

海外医療機関などご紹介
まずはご登録ください。

求人登録フォーム

ニュース

訪日外国人ら増加、求められる病院の整備 外国人患者の対応策などテーマにシンポ


2017-08-16

訪日外国人ら増加、求められる病院の整備 
外国人患者の対応策などテーマにシンポ

 

 観光立国を目指す政策などに伴い、これまで日本人患者の診療に専念してきた病院にも、外国人患者の受け入れ体制の整備が求められている。このほど都内で開かれたシンポジウムで、外国人患者に対応するときの留意点などをテーマに医療関係者らが話し合った。【佐藤貴彦】


■増え続ける訪日外国人、昨年2千万人超に

 日本政府観光局(JNTO)の推計によると、昨年の訪日外国人旅行者(訪日外国人)の数は約2404万人で、前年と比べて400万人超増えた。年間の訪日外国人数の増加は5年連続で、観光立国を目指した施策の効果が伺える。過去最多となる2000万人超は一里塚で、東京五輪・パラリンピックが開催される20年には4000万人、その10年後の30年には6000万人まで増やす目標を掲げている=グラフ1=


 訪日外国人の増加に伴い、求められるのが医療機関側の対応だ。観光庁は昨年3月、訪日外国人を受け入れられる医療機関のリストを作成、医療機関の利用ガイドと併せてJNTOのホームページで公表した。リストには現在、外国語で診療できるといった基準で都道府県が選定した300施設を超える医療機関の情報が載っており、今後、選定状況に合わせてリストを更新する予定だ。

 また、病院の医療サービスで訪日外国人を集める取り組みもある。治療のために訪日する外国人患者の支援などを手掛けるメディカル・エクセレンス・ジャパンは今年1月、そうした患者の受け入れに積極的で、受け入れ実績がある病院28施設を、「ジャパン・インターナショナル・ホスピタルズ」(日本国際病院)に認証、専用のウェブサイトを立ち上げて国外への情報発信を開始した。

 日本国際病院の特色は、情報発信する診療科を病院側が絞る点にある。複数の診療科を選ぶこともできるが、例えば筑波大附属病院(茨城県つくば市)は陽子線治療のみをアピールしている。

■在留外国人も最多、急がれる環境整備
 国内の医療機関が対応する外国人患者は、訪日外国人に限らない。日本で暮らす在留外国人に対応する体制づくりも急務だといえる。法務省によると、各年末の在留外国人の数は13年から増加し続けており、昨年6月時点で過去最多の約231万人に達した=グラフ2=


 在留外国人を含めて受け入れ環境を整備すべく、厚労省は医療機関が医療通訳を配置するための費用や、院内の案内を複数の言語で表示させるための費用を補助している。また、外国人患者の受け入れ体制を第三者が評価する「外国人患者受入れ医療機関認証制度」(JMIP)の普及啓発にも取り組んでいる。

 JMIPの認証を受けるための審査の対象は、日本医療機能評価機構の病院機能評価の認定を受けた病院や、日本人間ドック学会の機能評価の認定を受けた健診施設など。これまでに19施設が認証を受けた。



■重要なのは説明や同意、クレカ対応も

登壇したパネリストがさまざまな立場から意見を交わした
登壇したパネリストがさまざまな立場から意見を交わした

 都内で開催されたシンポジウムは、JMIPの普及啓発を目指す同省の事業の一環で、「外国人にもやさしい病院づくり」がテーマ。この中のパネルディスカッションで、外国人患者の対応に詳しい医療関係者らが、さまざまな立場から意見を交わした。

 済生会横浜市東部病院(横浜市鶴見区)の熊谷雅美看護部長は、「看護の立場」で登壇。同病院がロシアなどから患者を受け入れるほか、近隣に住む在留外国人の診療に取り組んでいることなどを紹介した。

 その上で、患者の宗教で禁じられていることなどに対応するだけでなく、対応できないことを説明して、同意を得てから診療する必要もあると指摘。例えば、自然分娩を控えたイスラム教徒(ムスリム)の女性の場合、希望に応じて定期的な健診を女性医師が担当するものの、分娩の日は予期できないことから、当直の男性医師が対応する可能性があるとしっかり説明するといった取り組みがトラブルを防止するとの考えを示した。

 一方、「薬剤師の立場」の吉山友二・北里大教授は、処方せんを受け付ける調剤薬局にも、外国人患者への対応が求められていると強調。調剤した薬剤の剤形が母国のものと違うだけで、不信感を生む懸念があることなどに注意を促した。

 また、「外国人の立場」で登壇した医師のデシュパンデ・ゴータム聖路加国際大教授は、米国での診療経験などを踏まえ、どんな宗教の患者も丁寧な説明を求めていると考察。患者の宗教や国籍に配慮することは大切だとしながらも、時間をかけて丁寧に説明することや、コミュニケーションを取ることの方が重要だと指摘した。

 ホスピタリティツーリズム専門学校の中村裕校長は、ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツの社長などを務めた経験を基に、「ホテル関係者の立場」で訪日外国人らが医療機関に求めていることを紹介。現金を持ち歩く習慣がない人もいることから、幾つかのブランドのクレジットカードで料金を支払えると重宝されると話した。

■診療所などの役割も重要
 さらに中村校長は、医療機関を利用した訪日外国人らが不満を漏らしたケースにも言及。料金に関するものが少なくないため、診療の前に幾らくらい掛かるのか説明すべきだと呼び掛けた。また、診察までの待ち時間の長さが不満につながることも指摘。大学病院などと比べ、「町場の英語を話せるクリニックの方が、満足感が高い」と述べた。

 これに対し、パネルディスカッションのコーディネーターを務めた真野俊樹・多摩大大学院教授は、大病院と診療所などの役割分担が政策で進められる中で、診療所などが今後、外国人患者にどう対応していくかは「極めて重要な問題だ」と指摘した。

 また、コメンテーターを務めた岩崎榮・卒後臨床研修評価機構専務理事も、目にごみが入ったといった「ちょっとしたことに対する処置」を求める訪日外国人が多く、診療所や中小病院での対応が求められると主張。「大きな病院に患者さんが来られた場合に、クリニックを紹介する、そういう意味での病診連携も重要」と述べた。

■外国人にやさしい病院は日本人も使いやすい
 加えて岩崎専務理事は、同機構の訪問調査者として訪れた臨床研修病院で、院内の掲示が「日本人にさえも分からない」ものだった経験を紹介。外国人患者に対応するため、各病院が掲示などを見直すことで、日本人患者にとっても使いやすい環境が整うとの見方を示した。

出所:CBnews