日本の医療の制度設計の問題は「医師が肉体労働者」であることを考慮していないことだ。部長や教授のような管理職になる一部の医師を除き、医師が最も働けるのは20代後半から30代半ばまでだろう。前出の調査でも残業時間は年齢とともに単調減少している。

 ところが給与は年功序列だ。大学病院の場合、20~30代の年収は300万~600万円、40~50代で800万~1000万円くらいだ。市中病院では、それぞれ600万~800万円、1500万円くらいだろうか。病院経営は「若手が働き、年寄りを養う」構造になっている。

 経営を効率化するには、若手を確保し、年寄りを辞めさせるのがいい。以前から、働けないロートル医師は、病院幹部から肩たたきされて開業したり、中小病院の管理職になっていた。

 このやり方はプロ野球経営と似ている。毎年オフになれば、ドラフト会議で有望な若手を獲得する一方で、働きの悪いベテラン選手は肩たたきされる。コーチや解説者になれる一部の選手を除き、野球とは全く別の第二の人生を歩む。多くの場合、収入は激減する。

 医師がプロ野球選手と違うのは、「現役」の勤務医よりも、「引退後」の開業医の方が収入が高いことだ。人にもよるが、開業医の年収は2000万~3000万円程度だ。

 この差は、開業医の方が勤務医より、よく働くとか、提供する医療行為の付加価値が高いからではない。厚労省が定める診療報酬が、開業医に有利になっているだけだ。

 

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