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AECがもたらすASEANヘルスケア産業の未来


2015-09-15

AEC(ASEAN経済共同体)の発足は、ASEANでの事業環境をどう変えるか。

 現地企業/外資系企業を問わず、ASEANで事業を展開するあらゆる企業にとって、昨今最もホットなトピックの1つではないだろうか。果たしてAECは、EUがもたらしたような単一経済圏の誕生を意味するのか、それとも同床異夢の加入国の意向が折り合わず、これまでと変わらない事業環境が続くのか。AECはどのような事業機会を生み、どのような競争環境の変化をもたらすのか。AECが産業界に幅広くもたらすインパクトについては、弊社ニューズレター「ASEAN経済共同体(AEC)がもたらすインパクト」(飛躍7号)に譲り、本稿では、特にヘルスケア産業にもたらすであろう変化と、そこで生まれる事業機会について触れたい。

 AECがヘルスケア産業にもたらすインパクトを論じるには、まず、ASEANのヘルスケア産業が持つ特質、例えばEUと比較して、どのような違いがあるのか、について理解しなければならない。筆者の実感として、ASEANのヘルスケアには、以下に挙げる3つの特質があるように思う。

1―1.都市型医療モデルとメディカルツーリズム

 ASEANは、国家間で医療水準の差が大きい、というのは、ヘルスケア従事者ならずとも想像がつく話ではないだろうか。 図Aのとおり、病院、病床数に代表される医療の「ハコ」に関してはずいぶんと差が小さくなっているものの、そこで必要となる「ヒト」と「カネ」の面では依然として大きな差がある、というのがASEANの現状だ。同一経済圏にあっても医療水準に差がある、というのは、程度の差こそあれEUでも似たような状況にある。しかし、国家レベルでの比較ではASEANの医療環境の特質は掴みきれない。というのも、ASEANは、極めて都市型の医療インフラ開発が進められており、国家間以上に都市間の格差が顕著だからだ。

 図Aで提示した指標の1つである「10,000人あたり病床数」について、ASEAN各国の主要都市と農村地域レベルで比較した図Bをご覧頂きたい。国家レベルでは、インドネシアとシンガポールには2倍以上の差があるものの、ジャカルタ特別州に限れば、既にシンガポールに匹敵する病床数があることが見て取れる。

さらに、国家レベルではシンガポールと同程度であったマレーシア、タイ、ベトナムに関しては、その首都クアラルンプール、バンコク、ホーチミンでは、既にシンガポールの2倍近い病床数が揃っている。「インドネシアやベトナムの医療はまさにこれからなので、まずはジャカルタ、ホーチミン(またはハノイ)に参入しよう」というような論調は昨今よく聞かれる。国全体としてはまさにそのとおりなのだが、実はジャカルタやホーチミンに関しては、既に過当競争気味、というのが実情だ。このように、極めて都市に集中して医療インフラの開発が進んでいるのがASEANの特徴だ。

 都市型医療モデルから得られる示唆は2つある。1つは、メディカルツーリズムがますます発展する、ということだ。都市部中心の医療インフラの発展と各国の地理的近接性、LCCのような移動手段の発展に後押しされ、国境を越えたメディカルツーリズムは今後もASEANのヘルスケア産業を考える上で重要な視点の1つになるだろう。メディカルツーリズムの成長が、マレーシアのペナン島やジョホールのような、さらなる医療都市を育てようとしている、というのも見逃せない。もう1 つの示唆は、国家間、都市間のギャップは、各国の医療財源が限られている以上、「当面は解消できない」ということだ。したがって、AEC統合後も、都市型医療モデルとメディカルツーリズムによる国境を越えた患者の移動がますます加速していくだろう。

http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/1509/15/news010.html