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ニュース: 【世界に挑む 日の丸医療】新たな息吹(中)西洋医学+漢方、次代牽引


2013-11-04

◆患者負担少なく

 8月26日、フィンランドの首都ヘルシンキ。万国外科学会の漢方セミナー会場は、世界中の外科医の熱気に包まれていた。

 漢方薬「大建中湯」の臨床効果を大規模に検証するため、2007年に国際医療福祉大の北島政樹学長らが設立した「DKT(大建中湯)フォーラム」の研究結果が発表されたのだ。

 “日本流”を海外に広めるには、各国の臨床医を納得させるだけの科学的根拠が不可欠。「フォーラム」は大腸、肝臓など臓器ごとに班を分け、大建中湯を使った群と偽薬を投与した群とで比較する「二重盲検試験」を実施。その集積データは安全性や効果について科学的根拠を示し、臨床による有用性を証明した。

 「これからは西洋の先進医学と日本の伝統医学の融合によって、新しい医療のエビデンス(科学的根拠)が得られていく。それが結果として、患者の生活の質の向上に役立つのです」。総括講演を行った北島氏の言葉にも、今後、漢方薬が果たす役割の大きさへの期待が込められた。

 腸の癒着などによる痛みや膨満感を改善する大建中湯について、北島氏は「大腸がんの術後患者で調べたら、漢方薬を使った場合、在院日数が有意に短かった。患者の負担が少なくて済み、医療経済面から見ても効果がある」と解説する。

 ◆独自の発展遂げ

 病気を直接攻撃する西洋医学に対し、自然治癒力や抵抗力を高め、患者の体質そのものを改善させる漢方医学。両者を併用することで手術後の回復を早め、患者の負担を軽減する治療法は、いまや日本では“常識”となっている。

 漢方が日本のオリジナル医療ということは、日本でもあまり知られていない。起源は中国だが、日本で独自の発展を遂げたのだ。「漢方」という言葉自体が、江戸時代にオランダから伝わった「蘭方」と区別するため名付けた造語である。

 中国の「中医学」との最大の違いは、顆粒(かりゅう)状のエキス製剤の普及が進んでいることだ。しかも品質が高く、成分にばらつきが少ない。もう一つの特徴は、日本では西洋医学と漢方医学の医師免許を分けておらず、1人の医師が両者を使いこなせることにある。

 こうした特徴こそ、西洋医学と漢方医学の融合が「日の丸医療」たる所以(ゆえん)であり、日本が21世紀の世界医療をリードする“武器”ともなる。

 漢方に世界の目が大きく向けられたのは、09年の万国外科学会のシンポジウムだ。歴代会長が顔をそろえ、「漢方薬はすでに『代替補完医療』ではない」との認識が広がった。

 米メイヨー・クリニックのマイケル・サール教授の働きかけで、著名な医学雑誌「サージェリー」に北島氏らの論文が掲載されたことが、米国での漢方の評価を高めた。タイトルには「漢方は補完医療の領域を脱出した」とあった。

 そして今、漢方薬の研究は、今秋から英オックスフォード大も始めるなど世界中に広がっている。

 こうした学者たちの研究成果を踏まえ、製薬会社「ツムラ」が米国での大建中湯の承認を目指し、FDA(米食品医薬品局)の臨床試験に挑んでいる。

 ツムラ役員は「承認が厳しい米国が認めれば、世界中の医師の評価が変わる。FDAは安全性情報に重みを置き、品質管理も問われるが、われわれにも日本の意地がある」と語る。

 ◆農業再生切り札

 漢方の可能性は医療分野にとどまらない。生薬の需要は世界的に伸びており、成長産業としての魅力も大きい。7月に東京で開かれたシンポジウム「薬草産業の将来展望」には、全国の農業関係者が駆けつけた。付加価値が高い生薬は農業再生の切り札ともなる。

 課題も残っている。このシンポジウムで渡辺賢治慶応大教授は「薬は厚生労働省、栽培は農林水産省といった省庁縦割りの仕組みの中で、漢方の将来像を描くところがどこにもない」と指摘した。

 伝統に裏打ちされ、日本を牽引(けんいん)する可能性も秘める漢方。生薬の栽培から、治療薬としての製造・臨床研究、海外市場の開拓まで国家戦略として進められるかが今後のカギを握る。

 

msn 2013.11.4

http://sankei.jp.msn.com/life/news/131104/trd13110411300005-n1.htm